地球から降る星
*五作から成る、短編オムニバス
「きらきら星」(出来ればゲーム音楽的なアレンジをしたもの)が流れる。
明転。
白い長方形のリモコンのような物を持って、TVゲームのテニスをしている男女。
男は軽く振っているが、女は熱がはいっている様子で、実際のプレーさながらのスイング。
しばらくゲームが続き、どんどん女がヒートアップしてくる。
振ったリモコンが男にガンガン当たるが女は気にしない、男は当たるたびに「痛い。」と言う。
男「痛いな!」
女「(リモコンを振って)あ!すかした!」
男「思いっきり当たってるんですけど。」
女「ね、もう一回。」
男「聞いてよ人の話。」
女「え?なんだって?」
男「始める前に言ったでしょ?軽く振るだけでいいって。」
女「いいじゃんどうだって。どれ?どれ押せばいいの?」
男「もう。(リモコンをいじって、またゲームを始める。)」
女、初めの一発だけ軽く振る。
次から思いっきり振り、男にリモコンを当てる。
女はさっきより熱くなっており、「オラ!」とか「死ね!」とか言ってる。
男「待って待って待って!」
女「あー!また、すかした!」
男「また、当たってるんですけど。」
女「ちぇっ!つまんないの!・・・クソが!」(リモコンを男に投げつけると、寝転がる)
男「あーもー・・・買ったばっかりなんだから・・・気に入ると思ったんだけどなぁ。」
女「あんたはさぁ、あれだね・・・ちょっと手を抜こうとか・・・あぁもういい!死ね!」(クッションか何かをなげつける)
男「・・・それさぁ、止めない?」
女「・・・。」
男「聞いてよ。」
女「何!?」
男「・・・クソ!とか、死ね!とかさぁ、止めないかな。」
女「なんで、いいじゃん。」
男「僕に言うならいいよ?・・・ほら、初対面の人に会った時とかに・・・(女、雑誌を読み出す)
って言うか・・・誰でもいい気はしないじゃない、そんなこと言われてさ。
あ、僕は別に嫌になったりとかしないけど・・・やっぱりさぁ、彼氏としてはさぁ、彼女には品行方正でいてほしい・・・」
女「最悪!」(雑誌を投げつける)
男「・・・・・(雑誌を読む)あー・・・てんびん座、最下位だね。」
女「あークソー!」
男「こういうの信じるんだっけ?」
女「一位だったら信じるけどさ、あーやだ、なんで順位つけんのよー、気分悪くなるじゃん。」
男「まぁ、それはわかるけど。」
女「あんたって何座だっけ?」
男「え?えっとね・・・(ちらっと雑誌を観て)しし座・・・。」
女「嘘!おとめ座でしょうが!おとめ座は一位だったよね。」
男「あ・・・。」
女「なんで嘘つくの?」
男「ん・・・ごめん。」
女「ちっ・・・(ベランダに出て、タバコを吸う)」
男「あ・・・あー・・・。」
女「何!?さっきから、あーあー言って!?」
男「タバコ・・・。」
女「タバコがどうしたって?」
男「あ、ううん、別にいいや。」
女「私はよくないんですけど。何?タバコ吸っちゃいけないの?」
男「いけなくはないけど・・・。」
女「・・・・・あんたさぁ、女に幻想持ちすぎだよ。」
男「そうかな?」
女「そうだっての。(タバコをしまうと、部屋に戻って来て、机の引き出しの奥をさぐる)」
男「あ!そこ!そこは駄目だって!」
女「(取り出した物を見て)目ぇでかっ。」
男「知ってたの?」
女「(取り出して物を見て)髪の毛、どピンクだし。こういうゲームばっかやってるからだよ。」
男「・・・軽蔑する?」
女「なんで?」
男「だってそういうのは。」
女「趣味は人それぞれだし、別に。」
男「そう?」
女「他の人は知らないけどね、私は別に・・・おどおどしてんじゃないよ、気持悪い。」
男「ごめん・・・(ベランダに出て、落ち込む)」
女「・・・(ベランダに出る)お互いさぁ、楽にやらない?」
男「どういうこと?」
女「・・・死ね。」
男「なんで!?」
女「まともに受け取るなって言ってんの!」
男「・・・・・。」
女「言ってみ?」
男「え?」
女「私に死ねって言ってみ?」
男「嫌だよ!死んでほしくないんかないもん!」
女「そういうことじゃなくてさ・・・あぁ、いいわ面倒くさい。」
男「なんなの?」
女「・・・うん、あんたはそのほうがいいわ。」
男「えぇ?」
女「あ!!・・・(いきなり手を合わせる)」
男「え?・・・あ、流れ星!・・・・・何かお願いしたの?」
女「したよ。」
男「そういうの信じるんだ?」
女「信じるだけなら無料だし、叶わなかったら叶わなかったで。」
男「そだね・・・なんてお願いしたの?」
女「人がいっぱい死にますように。」
男「えぇーーー!?」
女「あんたさっきから声大きい!夜中だよ?」
男「あ・・・なんでそんな願い事なの?」
女「冗談だもん。」
男「冗談を言うところなのかなぁ?」
女「もう一回やろ、これ。負けっぱなしじゃくやしいもん。」(部屋に入る)
男「あ、うん、いいよ。やろやろ。」(部屋に入る)
女「(パッケージを見て)なんて読むのこれ?W・・・。」
男「それねぇ。」
女「i、i、i。」
男「え!?」
女「W、i、i、i。」
男「(パッケージを受け取って)うわ、本当だ!一個多い!・・・・・なんて読むのこれ!?」
女「もしかしてパチモンつかまされたの?ださっ。」
男「通りで高いと思ったんだよ・・・。」
女「いくらしたの!?」
男「20万。」
女「死ね!!」
暗転。
「きらきら星」(出来ればオルゴール風にアレンジしたもの)が流れる。
曲が消える前に明転。
二人が座っている。
一人はオルゴールのようなものを前にして、流れてる音楽に聴き入っている。
もう一人(豚男)は興味がない様子。
男「(曲が終わる)ふぅ・・・。」(嬉しそう)
豚男「ぶーぶー。」
男「え?」
豚男「ぶーぶー。」
男「あ、そうだよな。つまんないよな。」
豚男「ぶーぶー。」
男「そうは言うけどさぁ、いい曲はいくつになってもいいもんじゃないか。それに俺、この曲、大好きなんだよね。」
豚男「ぶーぶー。」
男「飽きないんだよ・・・聴いてるとさぁ、頭の中に綺麗な星空がぶぁーーーっと広がって」
豚男「ぶー。」
男「こないかなぁ?そうかぁ。」
豚男「ぶーぶー。」
男「そうだよ。」
豚男「ぶー。」
男「もちろん!まだ諦めてないよー?今も少しずつ勉強してるんだ。」
豚男「ぶーぶー。」
男「いや、小さい頃からの夢だったしさぁ・・・宇宙飛行士。でも、(雑誌を見せる)ほら。ここ。」
豚男「・・・ぶー。」
男「びっくりしたわ・・・今、お金払えば誰でも宇宙に行けるのな。ある程度の訓練は必要らしいけど。」
豚男「ぶーぶーぶー。」
男「まぁそうだけどさ、工員だぞ俺ら?一生かかってもそんな大金、稼げないよ。」
豚男「ぶー・・・ぶーぶーぶー。」
男「詐欺じゃんそれ・・・例えばどんなの売るの?」
豚男「ぶー・・・ぶー?」
男「うん。」
豚男「ぶー・・・ぶー!」
男「絶対ばれるよ、一個増やしちゃったら・・・(W・i・i・i、と空に書いて)なんて読むんだよこれ。
大金なんて宝くじでも当たらないとな。(望遠鏡を取り出す)俺にはこれが精一杯。」
豚男「ぶー!」
男「へへ、ついに買っちゃった!(覗く)あーやっぱり綺麗だなぁ。覗いてみる?」
豚男「ぶー。」
男「そう?・・・綺麗だなぁ・・・(レンズの前に手をやって)ここ!ここに・・・あるんだけどな・・・取れない。
・・・あれ?あの星・・・うわ!あの星になんかいる!?手ぇ振ってる!?」
豚男「ぶぅ!?」
男「おーい!おーい!」(思いっきり手を振る)
豚男、男から望遠鏡うばって覗く。
男「嘘だよ。」
豚男「ぶっ!?ちょ、お前・・・・・ぶぅぅぅぅぅ!?」
男「悪い悪い、お前ならこういうの信じると思って。」
豚男「ぶー?」
男「オカルトとかSFとか。俺も好きだけどさ。」
豚男「ぶぅ。」
男「だから今もそんなことしてるんだろ?」
豚男「・・・・・。」
豚男の妹、出てきてノック。
妹「おい、豚ー?いるー?」
豚男「・・・。」
妹「駅前に行って来るねー。その後、朝まで飲むと思うからさぁ、明日の六時くらいまでに玄関の鍵開けといてねー。」
豚男「・・・・・。」
妹「返事はー?」
豚男「・・・・・。」
妹「返事!」
男「あ、あの!お兄さん、わかったって!」
妹「え?あ!すいません、いらしてたんですか!?・・・じゃあ行って来るから!」
男「あ、待って!」
部屋から出て、豚男の妹を呼び止める。
豚男、ドア越しに二人の会話を盗み聞く。
妹「はい?」
男「あいつさ・・・家族に対してもあれなの?」
妹「・・・はい。」
男「そっか・・・。」
妹「お恥ずかしい・・・。」
男「いやいや!」
妹「・・・大丈夫なんですか?」
男「何が?」
妹「昔の兄ならいざ知らず・・・今のあんなのと一緒にいて。」
男「・・・・・自分のお兄さん、あんなのとか言っちゃ駄目だよ?」
妹「・・・・・はぁ。」
男「あいつには・・・俺が必要だから。」
妹「・・・逆はどうなんですか?」
男「逆?」
妹「あなたにうちの兄は必要なんですか?」
男「・・・もちろん。大切な友達だもの。」
妹「・・・・・友情?」
男「そう。友情。」
妹「・・・わかんない。」(退場。)
男、部屋に戻る。
豚男はひざを抱いて背を向け、落ち込んでいる。
男「・・・・・さ、もう寝ようぜ!明日は五時起きだ。」
豚男「・・・ぶー。」
男「え?」
豚男「ぶー・・・ぶーぶーぶー。」
男「さっきの話、聞こえてたのか?・・・大丈夫だよ!言っただろ俺?お前は大切な友達だ。見捨てたりしない。」
豚男「ぶーぶー。」
男「嘘じゃないよ。」
豚男「ぶー。」
男「本当だって。」
豚男「ぶー。」
男「本当だ。」
豚男「ぶー。」
男「そんなこと思ってない!」
豚男「ぶー。」
男「嘘じゃない。」
豚男「ぶー。」
男「嘘じゃない。」
豚男「ぶー。」
男「嘘じゃない!!」
豚男「足ひっぱってるだろ?」
男「・・・・・え?」
豚男「小さい頃から言ってたよな、絶対に宇宙飛行士になるって。いっぱい勉強してさ、体力もいるからって運動もがんばってさ。
すげぇ努力してたのにさ、俺みたいなのと付き合ってるから・・・。」
男「・・・・・今日から俺は豚になる!・・・・・初めは、こいつ正気かと思ったよ。(部屋の隅においてある新聞を取る)
こんな予言、誰も信じてないのに。」
豚男「誰も信じてなくても当たるもんは当たるんだよ。その占いの人すげぇんだぞ?なんでも予言するの。」
男「うん、聞いたよ。」
豚男「1999年、七月、恐怖の大魔王が現れ、世界を滅ぼすであろう。・・・・・っていう予言は当たらないって予言したし。」
男「うん。」
豚男「某タレントが芸名を変えるとブレイクする・・・って予言も当たらないって予言したし。」
男「うん。」
豚男「今度の予言も当たるんだよきっと。」
男「明日か・・・空から巨大な災いが降り、多くの人間がいき絶えるであろう。」
豚男「『多くの人間』てことは動物になれば助かるんだろう!?ぶーぶー。」
男「その発想はどうなんだろうな・・・・・あと、どうして豚を選んだの?」
豚男「なぁお前もやれって!今からでも豚になるんだ!」
男「なんで豚をプッシュするの!?」
豚男「豚が嫌なら犬でも猫でもいいよ!早く!」
男「待てよ。」
豚男「早く四つん這いになるんだ!」(四つん這いになる)
男「・・・・・正直、後悔してないって言えば嘘になるな。」
豚男「ぶー?」
男「でもさ・・・ぶーぶー言ってるだけで、お前の言わんとしていることが理解できる。
家族も工場のやつらもわかんないのに・・・俺だけ理解できる。
それに気づいた時、俺は本当の意味でお前の友達になれたと思ったよ。」
豚男「ぶぅ・・・。」(お前・・・見たいな感じで)
男「ええい!とことん付き合ってやるぜマイフレンド!(四つん這いになる)ぶーぶー!」
豚男「ぶー?」
男「ぶーぶー!」
豚男「ぶー?」
男「ぶー!」
豚男「ぶー?」
男「ぶー!」
豚男「いや、何言ってるのかわかんねーって。」
男「ぶぅぅぅぅぅぅ!?」
暗転。
「きらきら星」が流れる。
しばらくして雑踏のSEとクロスフェード。
雑踏のSEをFOさせつつ明転。
舞台後ろに『Wiii』と書かれた箱がいくつか積んである。
星沼が『一台たったの20万円!』と書かれたパネルを持ち、喋っている。
その横で星野が白い長方形のリモコンでゴルフの素振りをしている、なぜか常に正面を向き、妙な笑顔。
少し離れて占い師が露店を構えている。
星沼「お仕事帰りのお父様ー、こんな時間までお疲れ様ですー、この不況の中ー、働いて働いてー、働きまくらねばー
ご家族を食べさせることはできませんー、が、しかし!お父様の休息のお時間はー、取れていますでしょうかー
せっかくの休日も『あなたー、掃除の邪魔だからどこかに出かけていてくださらない?』と奥様に言われてー、
家でごろごろすることも叶わずー、体も心も休まらない日曜を送ってはいませんでしょうかー?
ああ、なんと悲しいー、が、しかし!これさえあればもう安心!最新TVゲーム機、『Wiii』(うぃーい)です!
皆様、たまには自然に囲まれた中で思いっきりゴルフに打ち込んで、リフレッシュしたくありませんか?
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リアルサウンドを無駄に駆使し、まるで本当にゴルフ場にいるような気分にさせます!
たかがゲームとお思いのあなた!・・・そう確かにたかがゲームです、が、しかし!
今やゲームはここまで進化しているのです!ぜひこちらで体験していってみてください!」
星沼、辺りを見ている。
星沼「駄目だ、買ってくれるどころか足も止めてくれないや・・・星野さーん。」
星野「どーしたぁ星沼ぁ?」(顔は正面で、素振りは続けている)
星沼「そろそろ『Wiii』も売れなくなってきましたね、違う商品に変えたほうがいいでしょうか。」
星野「まーったくぅ、だからお前は未熟だというんだぁ。」
星沼「僕、何か失敗しました?」
星野「失敗したともさぁ。いいかぁ?この不景気ぃ、世のお父様が自らのためにぃ、20万もするゲーム機をぉ
買えると思うのかぁ?」
星沼「ああっ!そうか!ではどうすればいいでしょう?」
星野「ずぅぅぅばり、これだよぉ。(卓球の素振り)家族だぁ。家族みんなのために買わせるようにするんだぁ。」
星沼「家族のため・・・なるほど、やってみます。」
星沼「お仕事帰りのお父様ー、こんな時間までお疲れ様ですー、この不況の中ー、働いて働いてー、働きまくらねばー
ご家族を食べさせることはできませんー、が、しかし!ご家族とのスキンシップのお時間はー、取られていますでしょうかー
家庭内暴力ー、無理心中ー、親が子を殺しー、子が親を殺すー、そんな殺伐とした現代社会を潤すのは家族の愛です!
が、しかし!家庭を顧みずー、働かなくてはいけないのが企業戦士の辛いところー、が、しかし!
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星沼、辺りを見ている。
星沼「やっぱり駄目だ・・・星野さーん。」
星野「え?(激しく素振りをしていたので疲れている)・・・どーしたぁ星沼ぁ?」
星沼「やっぱり駄目ですよ、何か別の手はありませんかね?」
星野「まーったくぅ、だからお前はいつまでたってものび太なんだよぉ。」
星沼「の・・・え?」
星野「いいかぁ?まずサラリーマンをターゲットにするというのがそもそもの間違いなんだぁ。
狙うなら・・・・・おぉぉぉえるぅぅぅあぁぁぁ!」
星沼「・・・え?・・・・・あ、OL?」
星野「まぁここは私に任せてちょーよぉ・・・(何か格好いいポーズを取る)ぬぅぅぅ・・・あぁぁぁーーーーー!!」
星沼「星野さん!?」
星野「ぷしゅぅぅぅ・・・・・。」(気をつけの姿勢になる)
星沼「こっ、これはまさか!」
星野、ターゲット(OL)に向って歩いていく。
立ち止まると急に立ち振る舞いを変えて喋りだす。
星野「やっほー!白馬の王子様、見参!」
星沼「でた!ナンパ男モードだ!」
星野「毎朝毎晩の満員電車、上司からの嫌味、同僚の陰口、残業ばかりのつまらない毎日から君を救いに来たよ?
さぁ、(軽やかに馬にのるマイム)僕のお城に行こう!
ハイヤーーー!パカラッ!パカラッ!パカラッ!パカラッ!(舞台上を馬に乗っているマイムで駆け回る)
セバスチャン!姫をお連れしたよ!早速、パーティの準備だ!」
星沼、自分がセバスチャンと呼ばれていることにしばらく気づかない。
星沼「・・・え?」(自分を指差す)
星野「さぁ皆で歌うんだ!トゥインコー、トゥインコー、トゥインコースター!おーまーえーはー誰なんだー!
はーしーらーのかーげーでーおーまーえーをーみーてーるー!
トゥインコー、トゥインコー、トゥインコースター!おーまーえーはー誰なんだー!」
星野&星沼「トゥインコー、トゥインコー、トゥインコースター!おーまーえーはー誰なんだー!」
星野「はーしーらーのかーげーでーおーまーえーをーみーてーるー!」(星野&星沼、柱の影で見てるジェスチャー)
星野&星沼「トゥインコー、トゥインコー、トゥインコースター!おーまーえーはー誰なんだぁぁぁぁぁ!」
なぜか満足そうな二人。
星沼「さっきの人、行っちゃいましたけど。」
星野「失敗かなぁこれ。」(口調を戻して)
星沼「困りましたねぇ。」
占い師、いきなり立ち上がると飛び上がり、持っていたハリセンで地面を叩く。
驚いて、そっちをみる二人。
占い師「お困りですか?アミーゴ?」
星沼「アミーゴ?」
占い師「よろしければ、あなた方のことを占ってさしあげましょうか?」
星沼「占い?」
占い師「私の占いの結果通りにやれば、必ず大儲けできるでしょう。」
星沼「本当ですか!?星野さん、やってもらいましょう!」
星野「おぉぉぉちつけぃ!星沼ぁ!・・・こいつ、占った後で大金を要求してくるかもしれんぞ?」
星沼「あっ!そうか!・・・あのぅ、代金はどれほどで?」
占い師「心配ご無用、アミーゴ。お金は要りません。占いは売らないというやつです。
ただ、商売がうまくいって、利益が出ましたら、気持だけの金額をいただければ結構。」
星沼「やっぱり欲しいんじゃないですか。」
占い師「イエスかノーか!」
星野「では!占ってもらおうかぁ!」
占い師「・・・よろしい。では占いを始める前に・・・お二人とも、お名前は?」
星野「星野です。」
星沼「星沼です。」
占い師「あぁ、答えずともよかったのに・・・ご出身は?」
星沼「えぇと。」
占い師「あぁ、答えずとも結構。私には全てお見通しなのです。」
机を舞台中央に持ってくる。
占い師「これを。」
占い師、ハリセンを二人に渡す。
ディスコっぽいBGMが突然流れだす。
占い師「では・・・」
星沼「あの!これって?」
占い師「・・・見たままの物です、アミーゴ。」
星沼「いやそうじゃなく・・・。」
占い師「はい、四の五の言わない!では、皆さん(会場を見回して)私の後についてきてください!」
占い師、ハリセンを扇子に見立ててジュリアナっぽく踊りだす。
二人、同じ動きをしてそれについていく。
占い師「アミーゴぉ。」
二人「アミーゴぉ。」
占い師「アミーゴぉ。」
二人「アミーゴぉ。」
占い師「あいうえおあお、アミーゴぉ。」
二人「あいうえおあお、アミーゴぉ。」
占い師「網にかかった、アミーゴぉ。」
二人「網にかかった、アミーゴぉ。」
占い師「1、2、3、4、アミーゴぉ。」
二人「1、2、3、4、アミーゴぉ。」
占い師「アミーゴぉ。」
二人「アミーゴぉ。」
占い師「アミーゴぉ。」
二人「アミーゴぉ。」
占い師「お前はどっから来たんだよぉ。」
二人「お前はどっから来たんだよぉ。」
占い師「お前はどっから来たんだよぉ。」
二人「お前はどっから来たんだよぉ。」
占い師「銀河系の彼方から、はるばる地球にやって来た。」
二人「銀河系の彼方から、はるばる地球にやって来た。」
占い師「もしやお前は人間じゃない。」
二人「もしやお前は人間じゃない。」
占い師「かと言っても豚じゃない。」
二人「かと言っても豚じゃない。」
占い師「アミーゴぉ。」
二人「アミーゴぉ。」
占い師「アミーゴぉ。」
二人「アミーゴぉ。」
占い師「トゥインコー。」
二人「トゥインコー。」
占い師「トゥインコー。」
二人「トゥインコー。」
占い師「トゥインコー、トゥインコー、トゥインコースター!おーまーえーはー誰なんだー!」
三人「トゥインコー、トゥインコー、トゥインコースター!おーまーえーはー誰なんだー!
はーしーらーのかーげーでーおーまーえーをーみーてーるー!
トゥインコー、トゥインコー、トゥインコースター!おーまーえーはー誰なんだー!」
照明、薄暗くなる。
動きをやめ、前に出てくる星野と星沼。
占い師はその場で止まり、小さめの声でエンドレスで歌っている。
星沼「その話は本当ですか星野さん!?」
星野「確かな情報だぁ。金さぇありゃあ、宇宙船とやらに乗って、宇宙まで行けるらしぃ!」
星沼「一時はどうなることかと思いました・・・うっかり落ちてしまって。」
星野「さっさと金を溜めて、地球とはおさらばだぁ!」
星沼「はい!そしてまたあの夜空で輝きましょう!」
星野「(占い師に耳打ちされる)何ぃ!?これだけでは、足りないと言うのか!?」
星沼「一体、どれくらいの金額が必要なんですか!?(占い師が耳打ち)」
二人「・・・そんなに!?」
星沼「くそっ!夢のまた夢じゃないか!」
星野「おぉぉぉちつけぃ!星沼ぁ!・・・こうなれば、あの力を使うのだ!」
星沼「あれですか!」
星野「そうだぁ!我々は・・・相手の願いを一つだけ叶えることが出来る!星沼ぁ!私に願うのだぁ!!」
星沼「でもいいんでしょうか・・・星が星にお願いをするなんて。」
星野「気にすることはぬわぁぁぁい!さぁ!星に願いをぉぉぉ!!」
星沼「はい!・・・星野さん!僕に」
占い師、歌うのをやめる。
暗転。
(女の声SE)「人がいっぱい死にますように。」
明転。
星野と星沼は退場している。
占い師、イスに腰掛けている。
お客さんがいて、対応をしている。
占い師「そういうわけで、予言を一つ。『空から巨大な災いが降り、多くの人間が息絶えるであろう。』
・・・そうですね・・・人間って言ってますから、動物になってみればいいんじゃないですか?
例えば豚とか・・・そうですか、がんばってくださいね。・・・あ、お代は結構。占いは売らないというやつです。
あ、そこ気をつけてください、そこ・・・あー転んじゃった。」
占い師、立ち上がって、何かを拾いにいく。
野球ボールぐらいの大きさで、重たそう。
占い師「宇宙まで届くかねぇ・・・?」
拾うと、軽く放り投げ、ハリセンで打つ。
結構、遠くまで飛んだようで手を額に当てて、遠くを見る仕草。
もう一つ拾って、同じ動作。
暫くして、机に戻る。バナナを取り出して机の上に乗せる。
占い師「(ハリセンで机を叩いて)さぁ!一房、10円から始めるよ!?」
暗転。
「きらきら星」(出来ればロック的なアレンジをしたもの)が流れる。
FOしつつ、生ギターで「きらきら星」が聴こえてくる。
明転。
駅前。マイクを持った女と、ギターを持った男が路上ライブをしている。
どうやらそれなりに人は集まっているよう。
女は不思議な立ち姿勢で動かない。
男「(弾き終わり)・・・・・最高ぅ。皆、空を見上げてみてよ。星が出てる。ふふ、最高ぅの夜じゃない?
こんな夜にさぁ、こんなに大勢の皆とロックンロールできてさ、本当ぅに幸せ・・・幸せだよ。最高ぅ。
この幸せを例えるなら・・・週末にちょっと贅沢なビールみたいな?最高ぅ。
さて・・・実は、次の曲でみんなともお別れなんだけど・・・・・(拍手があったらしい)
ありがとう、ありがとう、皆、最高ぅだよ。
と言うわけで・・・お別れの前に、うちのお姫様にちょっと喋ってもらおうかなと思うんだ。
こいつ・・・クレイジーなのは歌だけじゃないんだよね。お姫様、名前は?」
女「ピコりんです★」
男「(ざわついたらしい)OK、OK。ブレイク、ブレイク。クレイジーなのはこっからだ。
ピコりん、お前はどこから来たんだ?」
女「ピコりん星★」
男「・・・クレイジー。じゃあ、ピコりん星について色々教えてもらえるかな?ピコりん星はどこにあるんだ?」
女「木星の隣★」
男「・・・クレイジー。NASAもびっくりだよね。じゃあ、ピコりん星の美味しい物ってなんだ?」
女「〜〜〜(地球の言葉じゃない言葉)★」
男「ピコりん。ピコりん星の言葉で言っても俺たちわかんないなぁ。そのなんとかってのは地球の食べ物で言うと
どれに味が似てるんだい?」
女「もずく★」
男「・・・クレイジー。ピコりん星の人ってカロリーに気を使ってそうだね。
そうだ、ピコりん星の言葉で簡単に使えるのあったら教えてよ。」
女「〜〜〜(地球の言葉じゃない言葉)★」
男「ん〜ごめん、もう一回。」
女「ぴっこり〜ん★」
男「・・・さっき言ったのと違わない?じゃあ、皆で言ってみようか?せーの・・・」
女&男「ぴっこり〜ん★」
男「ふふ・・・これは地球の言葉でどういう意味なんだい?」
女「死ね★」
男「クレイジー!よりによって、そんな意味の言葉を教えるかい?君は?
もっと実用性のあるのを教えて欲しいなぁ、『こんばんわ』とか。『こんばんわ』ってどう言うんだい?」
女「ぴっこり〜ん★」
男「万能だね!ぴっこり〜ん★は、『死ね』と『こんばんわ』の意味があるのかい?万能じゃないか!よく混乱しないね・・・。」
女「ぴこぴこぴっこ〜ん★」
男「・・・うん、もうよくわかんないや。じゃあ、最後にピコりんがどうしても言いたいことが・・・あるんだよな?」
女「(こくり)」
男「じゃあ・・・どうぞ。」
女「うちの兄が・・・豚になりました★」
男「クレイジー!!(ギターを掻き鳴らす)
駅前にお集まりのみなさん!ぴっこり〜ん★(こんばんわ)今夜は全員、ぴっこり〜ん★(死ね)・・・最高ぅ!!」
暗転。
「きらきら星」が流れる。
明転。
宇宙船の機内。
舞台後ろでパイロット3名が宇宙船を操縦している。
手前にはスチュワーデスが客席を意識して立っている。
スチュワーデス「皆様、本日は『銀河系一周旅行ツアー』にご参加くださいまして、誠にありがとうございます。
このツアーは、皆様を宇宙船に乗せて、銀河系の星を見て周るというだけの大変くだらないツアーです。
実際に宇宙服を着て外に出てみるとか、星に着陸してみるとか、凶悪宇宙人の襲撃!
翼がやられた!あぁぁ!墜落する!ドカーン!はっ・・・どうやら私だけ助かったようだ。
しかし、ここは一体!?というようなことは一切ございません。
価値観はそれぞれとは言え、あれだけの大金を支払ってこのツアーに参加された皆さんの神経を疑います。
家でTVゲームでもやってたほうがよっぽど楽しいと思うんですけどね。
このツアーの料金で一台20万のWiiiが何台買えるかと、いう事でございますね、はい。
あ、皆さんご存じないですか?Wiii。似たような名前のゲーム機が他にあるんですけどね。
最近はこっちのほうが人気出てきてますね、はい。キャッチフレーズがまたすごくてですね。
『任天堂もびっくり!無駄な高さのクォリティー!』
一時期、Wiiiのリモコン持って目玉が飛び出てるマリオの画像がネットで出回ってましたね、風刺ですね。
えー、そのWiiiですが、後ほど行います、ビンゴゲームの景品になっております。お楽しみにしておいてくださいませ。
と言ったところで、皆様。右手をご覧下さい、火星が見えてまいりました。
この火星、地下に水があるかもしれないということで現在、調査が進んでいるわけですけどもね。
水なんか蛇口ひねればいくらでも出てきますのに・・・科学者のやることはよくわかりません。
火星を過ぎますと、小惑星帯と呼ばれる場所に入ります。えー、貞操帯じゃないですよー。
はい、現在、私、思いついたままに喋っておりまーす。
さて、この一帯を過ぎますと、木星が見えてまいります。地球や火星とは比べ物にならないほど大きな天体です。
・・・あれ?木星の隣に何か?・・・何やらピンク色の星が?まっ、まさかあの星はぴこ・・・はい、冗談でーす。
・・・えー、私、今日は色んなキャラクターをやってましたので疲れております。
木星を過ぎますと、土星が見えてまいります。こちらもかなり大きな天体ですね。
木星と土星がちょうど並ぶ位置にきた時、女性のバストのように見えることから、『ボイン現象』と呼ばれております。
えー、嘘ですけども・・・・・はい、苦情はアンケートの方にお願いしまーす。
ここにきて、下ネタ連発というね・・・ギリギリのラインでやってるつもりですけども。
土星といえば、この輪っかが大きな特徴でございます。氷や塵なんかで出来ているそうですね。
土星を過ぎますと天王星、海王星と見えてまいります。その先にはかつて惑星として存在した冥王星が・・・
ん?なんでしょう、今の音は?」
パイロット1「何だ!?何か船にぶつかったぞ!?」
パイロット2「地球の方から飛んできたぞ!?」
パイロット3「モニターに写せ!・・・こっ、これは!」
パイロットたち「流れ星だ!!」
スチュワーデスとパイロット、円を描くように立ち位置の交換。
パイロット1「大変だ!翼がやられた!」
パイロット2「火が出てる!」
パイロット3「なんとか地球までもたせろ!・・・大気圏突入!」
パイロットたち「うぉぉぉぉぉ!!」
パイロット1「大気圏突破!」
パイロット2「海に着水します!」
パイロット3「よし!よくやった!」
パイロットたち「うわぁぁぁぁぁ!!」(衝撃)
パイロット1「何だ!?また何かぶつかったぞ!?」
パイロット2「モニターに写します!」
パイロット3「これは!?」
パイロットたち「流れ星だ!!」
パイロット1「どうして地上から流れ星が飛んでくるんだ!?」
パイロット2「それも二発!!」
パイロット3「落ち着け!操縦に集中するんだ!」
パイロット1「・・・駄目です!操縦機能が完全にやられました!」
パイロット2「衝突のせいで、船の落下地点にくるいが出ました!このままでは街中に墜落してしまいます!」
パイロット3「なんということだ・・・。」
パイロット1「星に」
パイロット2「星に」
パイロット3「星に」
パイロットたち「星に願いぉぉぉぉぉ!!!」
スチュワーデスとパイロット(叫びながら)、円を描くように立ち位置の交換。
スチュワーデス「えー、どうやら落ちてるみたいですね、この船。
だから家でゲームやってたほうがいいって言ったんですよ、私は。
・・・あーこのままだと、あそこの駅前に落ちちゃいますね。
なんだか人、集まってますね・・・あー路上ライブだぁ。
こりゃあ、被害でますよ・・・・・何人、死にますかね。」
台詞の途中から、歌が聞こえてくる。
暗転。
歌が盛り上がるところでいきなり爆発音。
明転。
スチュワーデスが倒れている。
少し離れたところで、男が一人座っている。
スチュワーデス「はっ・・・・・どうやら私だけ助かったみたい・・・・・(男に気づく)あ、あなたも助かったの?」
男「・・・・・。」
スチュワーデス「なんとか言ってよ。」
男、振り返り、四つん這いになる。
男「ぶー。」
どこからか、Wiiiの空き箱が転がってくる。
暗転。
終。